アジア太平洋地域(APAC、中国を除く)は、先行きが不透明な中でも著しい経済成長を見せています(*1)が、どんな話題がマーケターたちの関心を集めているのでしょうか。
2023 年上半期に APAC 版 Think with Google で、読者のエンゲージメント率(*2)が高かった記事 5 本の概要を日本語で紹介します。全文(英語)は各リンク先からご覧ください。
APAC の生活者はデジタルに習熟しており、モバイルを高度に使いこなしています。そんな人々の心をつかむにはどのような戦略が有効か。ヒントがここにあります。
1:Google AI を活用して香港の生活者ニーズに応える
英語版の元記事:Hi, buy, come again: Satisfying Hong Kong shoppers with AI-powered Search solutions
著者:レイチェル・チャン(Product Marketing Manager - Large Customer Marketing at Google Hong Kong)
生活者の購買行動は、国や地域を問わず複雑化しています。この記事で紹介するのは香港の事例です。
香港の生活者は自分たちの価値観に合った高品質のブランドや製品を求めていますが、その定義は人によって異なります。顧客すべてのニーズを的確に把握することは非常に困難です。
そこで活用できるのが、Google AI を活用したソリューションです。広告チャネル全体にわたって広く顧客ニーズを把握し、迅速に応えることができます。
たとえば香港のオンライン旅行代理店である Klook は、 Google AI を活用したレスポンシブ検索広告や部分一致のマッチタイプなどを使い、予約数を 3 倍に増やしました。
またコスメブランドの L’Oréal Paris と香港の代理店である OMG は、Google の P-MAX キャンペーンを活用。オンラインとオフラインの両方でのシームレスな買い物体験を求める香港の生活者ニーズを捉えたことで、コンバージョン数は 5 倍以上に増加し、顧客獲得単価(CPA)を 49% 削減することに成功しました。
2:デジタル市場の成長著しいインドにおけるユーザー拡大の鍵
英語版の元記事:e-Conomy India 2023: Strategies for growth in India’s digital decade
著者:プリヤ・チョーダリー(Director, Business Solutions and Insights, India at Google)、ナヴニート・チャハル(Partner, India at Bain & Company)、ヴィシェシュ・スリバスタヴァ(Managing Director, Investment, India at Temasek)
続いて紹介するのは、インドでの事例です。記事では成長が著しい同国の市場を分析し、デジタルや EC サービスを成長させるための戦略を解説しています。
Google では Temasek、Bain & Company と協力して、数年間にわたりインドのインターネット経済の成長を調査し、その内容を「e-Conomy India 2023 report」として発表しました(*3)。
同レポートによると、2022 年時点でのインドのインターネットユーザーは 10 億人で、デジタル市場は 1750 億ドル以上です。今後も成長が見込まれており、2030 年までには市場規模が 1 兆ドルに達すると予測されています。
またインドのネットユーザーとの関係を維持、拡大するための鍵として次の 3 つを挙げています。
たとえば AI を活用したパーソナライゼーションについてですが、インドのユーザーは急速にデジタルに習熟してきており、自分自身に最適化されたサービスを求めています。インドの都市圏に住む人々のおよそ 70% が、パーソナライズされた製品やサービスに対して割増料金を支払うことをいとわないと回答しています(*4)。
そのため企業としては、顧客の同意のもとでファーストパーティデータを活用することが重要です。
食品会社の Mondelez India では、ギフトボックスの販促にこのアプローチを使用したところ、売り上げが 42 % 増加しました。
そのほか記事では、オンラインコミュニティの中でブランドとの関係を築く重要性や、今後インドのデジタル市場で見込まれる激しい競争に勝ち抜くためのアプローチなどを紹介しています。
3:APAC の小売業者が買い物のピークを捉える方法
英語版の元記事:Ready, set, sell: How to win the marathon of peak shopping moments and sustain profits
著者:ジェローム・ハムリン(SEA Industry Head, E-Commerce at Google)、ディヴィヤシャリ・バート(Industry Head, Conglomerates, India at Google)
商品が売れるタイミングは、クリスマスのような季節性のイベントだけではなくなっています。いまや APAC では、ほぼ毎月のように買い物のピークが訪れており、その機会をどうつかむかがブランドや小売業者にとっての課題になっています。
たとえば東南アジアだけでも、2022 年下半期で 15 回以上のピークがありました。ラマダンやディワリといった伝統的な行事にまつわるセールやブラックフライデー、各 EC サイトのセール日など、現在もそうした瞬間は増え続けています。
生活者にとってセールは喜ばしいものですが、一方で生活者に対して継続的な割引を期待させ、小売業者の利益低下につながる懸念もあります。また割引だけでは顧客獲得が難しくなっており、セール終了後にカートに未購入の商品が残るケースも多いのが実情です。
購入を迷っている人々に決断してもらうために重要なのは、商品の選択に自信を持ってもらうことです。記事では、生活者の商品選択の自信を高めるためのポイントとして以下の 5 つを取り上げ、それぞれ詳しく解説しています。
- 社会的証明(ソーシャルプルーフ):買い物客は他の買い物客を信頼しているため、顧客のレビューや評価は、自信を持って購入を決定する上で非常に重要です。
- 配送の手間:迅速な配送や店舗での受け取り、無料返品などを提供することで、顧客の不安を解消できます。
- 権威づけ:専門家からの評価や賞を活用することで、顧客の信頼を獲得できます。
- 経験則に訴える簡潔な説明:買い物客は、迅速に意思決定するために経験則に頼ることがよくあります。たとえば「100% 天然成分を使用したペットフード」などの製品仕様の短い説明は、人々の意思決定に役立ちます。
- 無料の力:無料の付属品やサンプル、テクニカルサポートなどを提供することで、安心して購入できます。
4:小売が成長を続けるための、バランスの取れたマーケティング戦略
英語版の元記事:Retail’s balancing act: 3 steady ways to drive sustained performance
著者:メリッサ・リー(Sector Director and Head of Retail, Brand, Finance and Government at Google APAC)、アシク・アショカン(APAC Advisory Lead at WARC)
小売業者は、ブランドを構築する長期的なマーケティング戦略と、売り上げ拡大を目指した短期的な戦略のどちらを取るか、選択を迫られることがよくあります。特に予算が限られている場合には、マーケターの頭を悩ませる問題でしょう。
しかしこの 2 つの戦略は対立するものではありません。生活者は、ブランド価値を価格以上のものと捉えるため、長期的なブランド構築が結果的には短期的な売り上げの達成にも貢献するのです。
自社の直販サイトと EC サイト両方のバランスをとることも同じです。これも「どちらか」ではなく、両方をうまく組み合わせることが重要です。前者はファーストパーティデータを獲得して顧客との関係性を構築、維持できますし、後者は短期的な売り上げにつながります。
さらにオンラインとオフラインを行き来するオムニチャネルの顧客を獲得することも大切です。オムニチャネルの顧客は、そうではない顧客と比べて 1.5 倍 ~ 2.1 倍の価値があるといわれているため(*5)、店舗と EC の壁を取り払い、組織を変えていくことが重要です。
これらの戦略をバランス良く進めるのは簡単ではありませんが、Google AI を使った各種ツールではそれをサポートできます。記事ではその具体的な方法も紹介しています。
5:YouTube で人々の購入を後押しする
著者:ルーニート・カウル(Product Marketing Manager, YouTube)
昨今、インターネット上ではフェイク情報が増えるなど、情報の不確実性が増していますが、これは人々の購買行動にも影響を及ぼしています。「商品の選択に自信がなく、購入を検討したが、買わない」という行動が増えているのです。
実際、APAC では 3 人に 1 人が「自信が持てないので、検討していたブランドを購入しなかった」と回答しています(*6)。
こうした懸念を払拭する方法の 1 つが、YouTube です。APAC においては、85% の人が「 YouTube で製品に関する最も高品質の情報を得られる」と答えており、YouTube は生活者の意思決定を後押ししているのです(*7)。
特に、YouTube ショートのようなモバイル向けの短尺フォーマットが急速に人気を集めています。同時に、コネクテッドテレビの使用も増えており、テレビで YouTube を見る人も増えました。また Google では、Google AI を使って動画の最適化や広告配信の効率化をサポートする多くのツールを提供しています。
記事では、YouTube の役割と Google AI がブランドのマーケティング戦略にどのように影響するかについて概説します。
以上、2023 年上半期に APAC 版 Think with Google でよく読まれた記事 5 選でした。
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2023/08/20 03:20 記事を更新。初出時、出典の数字に誤りがあったため、文章を適宜修正しました。