Think with Google では、継続的に生活者や市場の動向を分析していますが、今年もこうした調査や分析に多くの関心が集まりました。
2023 年に 読者のエンゲージメント率(*1)が高かった記事 5 本を紹介します。
1:Google トレンドで振り返る 2022 年 —— Year in Search から見る 3 つの生活者動向
急激な円安、物価高など不確実性が高まっていた 2022 年、中国を除くアジア太平洋地域(APAC)における検索動向(*2)を分析しました。日本独自の分析を加えながら、「アイデンティティの再考」「価値の探求」「楽しみの発見」という 3 つのテーマでマーケティング戦略のヒントを探りました。
たとえばアイデンティティ再考の例として、検索が具体化したことが挙げられます。不確実な状況で自分のアイデンティティをより意識するようになった結果、たとえばインドでは「卵型の顔のヘアスタイル 男性」の検索が 330% 以上、フィリピンでは「女性用正装」の検索が 110% 以上増加しました。
また独自のアイデンティティを構築する方法を模索する中で、日本でも「タイパ」「ジェンダー平等」「複業」などの検索が増えました。
そのほか、インフレの進行により物の価値を見直す人が増加。日本では「円安 いつまで」の検索が 2,300% 伸びるなど、金融や経済のリテラシーを高めようと考えた人も増えたようです。
不確実な状況だからこそ、ささやかなぜいたくや手頃な刺激を楽しむ姿勢も見られました。国内では「リベンジ 消費」「ホテルスパ」「格安航空券」などの検索が増加しました。
2:アプリでサービスの可能性が変わる、EC や家具・家電、銀行、旅行の 4 カテゴリを調査
アプリがサービス自体の利用にどのような影響を与えているのでしょうか。 2020 年以降のデータや 2022 年に実施した調査を基に前後編で解説しました。これまで感覚的に理解していたアプリに関する認識を、ユーザーの声やデータから裏付けようとした試みです。
調査では、「EC」「家具・家電」「銀行」「旅行サービス」の 4 カテゴリで、アプリユーザーと Web ユーザーの特徴を分析しました。
調査から明らかになったのが、次の 3 点です。
- アプリを利用し始めることで、サービスの利用時間が純増する
- アプリ利用が購入を後押しする
- アプリを通じてサービスの利用が習慣化する
つまり、これまで Web のみでサービスを利用していた人に対して、アプリの利便性を理解してもらえれば、サービスの利用や商品の購入を促せるということです。
記事ではこれら調査結果の詳細と共に、企業がアプリを通じて人々との接点を深めていく際のポイントなどを解説しています。
3:カスタマージャーニー全体で動画広告の効果を測定 —— アトリビューション分析、MMM など
動画広告でのカスタマージャーニー全体へのアプローチは、短期と長期のビジネス目標を両立させるための有効な手法です。Nielsen の調査(*3)によると、興味関心を持っている見込み顧客に向けたキャンペーンに認知施策を追加することで、ブランドの投資利益率(ROI)が 70% 向上。同様に、興味関心や検討段階にある顧客に対して、認知施策を打ったブランドは、ROI が 13% 向上しました。
こうした戦略を成功させる鍵の 1 つが、適切な測定ツールの選定です。
一般的に、各広告のコンバージョンへの貢献を割り当てる「アトリビューション分析」は広告の効果的なタッチポイントを見つけるのに役立ちますが、これだけに依存してもいけません。アトリビューション分析の結果のみに最適化してしまうと、短期的な成長は見込めますが、次第により上流のブランディング戦略に投資しにくくなるためです。
そこで、広告の純増効果を測る「インクリメンタリティの測定」を組み合わせることが有効です。定期的なインクリメンタリティ測定を中長期的な効果測定計画の中に組み込むことで、継続的な最適化と改善が可能になります。
またプライバシーに配慮した方法で、カスタマージャーニー全体における YouTube 広告のインパクトを測定できるのが「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」。オンライン、オフラインを横断したデータから、チャネルごとの ROI を測定し、最適な予算配分などを導き出せます。
本記事は US 版 Think with Google の記事を翻訳、編集したものです。
4:生活者のニーズと効率化の間でジレンマ、小売業はデータ活用で全社連携に活路あり
昨今の厳しい収益環境に置かれた小売企業は、顧客ニーズの多様化と効率的なオペレーションの両立という難題を抱えています。
顧客ニーズを優先すると利益が圧迫され、逆にオペレーションを重視し過ぎれば顧客満足度で競合に後れをとるリスクがあるというジレンマに直面しているのです。
いかにこのジレンマを解消し、両輪で取り組むために重要なのが、バリューチェーンのプロセス間での協業です。調達(場合によってはプライベートブランドの生産)から輸送、店舗業務、EC 業務、販売促進、配送までの全社的な連携を推進することで、ジレンマを乗り越えることができます。
そしてこの全社的連携を促す仕組みの鍵を握るのが「デジタル化」です。
デジタル活用を進めることで、店舗での購買行動や店頭在庫情報のような今まで見えていなかったオフライン情報までもが、データとして蓄積できるようになり、オンラインとオフラインの情報を重ね合わせることで、今まで断片的にしか見えていなかったヒトやモノの動きをより深く理解できるようになります。
一般的にバリューチェーンに基づく小売の業務は、上流から下流までの一方向で表現できますが、データを中心に捉え直すことで、チェーンは図のようなリング状になります。これにより各業務が相互作用し、相乗効果を発揮できるようになるのです。
記事では、小売各社の具体的な戦略、実践例なども詳しく解説しています。
5:アンケート調査の「広告を見た」という誤認をどう解消する? NTTドコモの解決策
インタビューやアンケートでの効果測定に関して、NTTドコモ社内の検証では、特に「広告想起」に関して推定値よりも高く評価されてしまうというバイアスの存在がわかっていました。NTTドコモに限らず、業界での存在感が強い企業で発生しがちな問題です。
そこで、Ads Data Hub(ADH)を活用したログベースでの測定を試みました。ADH はユーザーのプライバシーに配慮しながら、精緻な広告効果の計測を可能にするソリューションです。調査会社のインテージが保有するテレビ CM の接触ログデータと調査データ、そして Google の広告接触のログデータを、プライバシーに配慮した形で ADH の環境下で紐づけました。広告接触者と非接触者それぞれの接触前後のデータを分析することで、バイアスを除いた広告効果を測定できるのです。
測定の対象としたのは、2022 年に実施した若者を支援するプロジェクト「docomo future project」の YouTube 広告とテレビ CM です。ADH の環境下でブランドリフト調査を実施したところ、広告自体の認知や興味は、YouTube 広告とテレビ CM のどちらでも有意なブランドリフトが見られました。加えて YouTube 広告では、同社が「若者へのチャレンジの場を提供している」という認識に関するリフトも確認。広告からさらに一歩踏み込んで、ブランドイメージの理解を促すことに成功したと言えそうです。
新しい効果測定を取り入れたことで、NTTドコモでは、メディア別の広告効果を詳細に可視化できるようになりました。今後のメディアプランニングやメディア投資をダイナミックに変更できるようになったことも大きな収穫だったようです。
以上、2023 年によく読まれた記事 5 本を紹介しました。記事下の「あなたへのおすすめ」欄から、関連する記事もぜひご覧ください。