コロナ禍を経て、生活者の行動や意識の中には、以前に戻ったものもあれば、変化を経て新しい形で定着したものもあるでしょう。Think with Google 日本版では、そうした変化の過程を捉えた調査の分析などがよく読まれていました。新しいマーケティングのあり方を模索しているのかもしれません。
今回は 2022 年に読者のエンゲージメント率が高かった記事 5 本を紹介します(*1)。
1:調べる、検討する、買う時の Google とのタッチポイント:2022 小売業界向けデジタルマーケティングガイド
ここ数年で消費者のカスタマージャーニーは変化しています。企業側はその変化に合わせて、オンラインや実店舗での体験を組み合わせてアプローチすることがかつてないほどに重要になりました。
調査では、人々が新しいブランドや商品を発見するために、次のような行動をとっていることがわかりました。
また商品の購入を決めた後は、Google マップで目的の製品を扱う最寄りの実店舗を探す傾向にあります。Google マップでの世界における「近くで買い物(shopping near me)」検索は、2021 年 12 月から 2022 年 2 月の期間で、前年同月比で 2 倍以上に増加しました(*2)。
こうしたカスタマージャーニーを把握し、そのあらゆる瞬間で、顧客と接点を保つためのアプローチが重要なのです。
US 版 Think with Google の記事を翻訳、編集した「小売業界向けデジタルマーケティングガイド」では、この記事を含め、新規顧客の獲得や EC の整備、デジタル広告による実店舗での販売促進など、6 つの切り口で、小売業におけるマーケティングのヒントをまとめています。
2:Google トレンドで振り返る 2021 年 —— Year in Search からみるビジネスと生活に関する 5 つの生活者動向
2020 年には世界的な感染症拡大の影響で人々の意識や生活のあらゆる場面で変化が起きました。その後 2021 年になると、そうした変化が一過性のものではなく、定着した行動なども見えてきました。
このレポートでは、中国を除くアジア太平洋地域の 2021 年の検索動向をもとに、日本との共通点と違いに触れながら、2022 年のマーケティング戦略の指針となる 5 つの生活者動向を紹介しています。
たとえば、顕著だった変化の 1 つが「デジタルのメインストリーム化」です。2020 年には行動制限などに伴い、必要に迫られてオンラインサービスを利用し始めた人たちが多かったものの、行動制限が軽減されて以降も、デジタルの世界に慣れた生活者は、オンラインを選ぶようになっていました。
それを示すように、日本では「ライブコマース」の検索が 75%、「モバイル決済」も 20% 以上増加。APAC 諸国でも、台湾ではオンラインバンキングに関する検索が 50% 以上、オーストラリアやニュージーランドでは「当日配送」の検索が最大 70% 増加しました。
「デジタルのメインストリーム化」のほかにも、「人生観の再構築」「距離を埋める」「真実の追求」「不平等の拡大」といったテーマ別に、それぞれ検索動向を読み解きました。
3:継続購入の深層心理
特定のものを「何となく購入し続けている」という習慣的な継続購入は、これまで顧客ロイヤリティによって説明されてました。しかしそれだけでは説明しきれない行動も見られます。定量調査や定性調査を通じて見えて来た、継続購入のメカニズムを全 3 回で紹介しています。
情報と選択肢があふれている現在、生活者はより直感的に商品を購入するようになっています。そして同時に、情報探索を通じて自分の直感に自信をもちたいといった心理が強いことも見てとれました。
記事では、商品選択に対する自信の強度に対して「肯定度」という新しい概念で定義し、商品と生活者との長期的な関係性を理解しようとしました。
調査によると、肯定度が高い買い物では、購入後の満足度も向上することがわかりました。初回購入前の肯定度を高めることで利用体験が向上し、さらに肯定度が高まって次回購入につながる、といったように、肯定度による連鎖反応こそが継続購入であると推察できます。
調査ではさらに、選んだ商品に関して新しい情報に接することがない状態が続くと、肯定度が下がることもわかりました。肯定度を維持させるための企業からのコミュニケーションがより重要になっているのです。
4:マーケティングを俯瞰で見るために「Research」をどう考えるか:今こそ考えたい「マーケティングリサーチ」の本質
マーケティングリサーチとは何なのか、その定義から実際の調査手法に至るまで、全 6 回にわたって解説しました。
そもそも英語の「Research」と日本でいう「調査」は、同義ではありません。前者は Investigation や Study を含む概念で、事実を明らかにすることで新たな結論への到達を目的としています。こうした表現のズレこそが、日本におけるマーケティングリサーチ、あるいはマーケティングリサーチャーの役割にも影響を及ぼしているのではないかと考えられます。
本質的なマーケティングリサーチとは、1 つ 1 つのデータが明らかにする事実の関係性を読み解き、その背景や意味合いを検証した上で、1 つかそれ以上の可能性や方向性を提示するものです。そしてマーケティングリサーチャーの役割は、すべてのデータを読み解くことではなく、専門家が立証した個々の事実から新たな結論を導き出すことなのです。
連載では、こうしたマーケティングリサーチの概念のアップデートから、定量調査や定性調査といった実際の調査手法の設計やデータの読み解き方に至るまで、広く解説しています。
5:ソニー損保はテレビと YouTube を分断なく最適化、サイト来訪単価を約 30% 改善
インターネットに接続した「コネクテッドテレビ」の利用が広がる中、テレビ CM と YouTube 広告のシームレスなコミュニケーション設計が重要になっています。記事では、ソニー損害保険株式会社の事例を取り上げました。
ソニー損保はこれまで、テレビ CM を中心に認知や初期の興味関心を醸成してきましたが、生活者の視聴動向が変わる中で、YouTube 広告を強化しました。
まずは、テレビ CM と YouTube 広告を同じものさしで評価し、運用の PDCA を回していくための仕組み作りからスタート。広告代理店側の組織体制の分断を解消し、テレビと YouTube を統合したプランニング、バイイング、モニタリング、そしてクリエイティブ制作の PDCA を実現したのです。
その上で「サイト来訪者の獲得単価」を KPI に設定し、「テレビと YouTube の予算配分」「必要なターゲットリーチやフリークエンシー」の 2 点を検証しました。
結果として、YouTube に大きくシフトしたエリアでサイト来訪単価が大きく改善。リーチとフリークエンシーについても、調整したことで効果をあげました。
このほか、2022 年 10 月に開催したマーケターのための YouTube の祭典「Brandcast」で発表した最新のユーザー動向や事例はこちらのページにまとめています。
以上、2022 年に最もエンゲージが高かった記事 5 選でした。
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