Google が 2023 年 3 月から 6 月にかけて実施したアンケート(*1)、インタビュー調査(*2)を基に、過去 2 回の記事では旅行者の意識や行動を分析してきました。
第 1 回では旅行スタイルによって旅に求める要素が異なること。第 2 回では、旅行スタイルによって情報収集の仕方も変わっていて、また旅行の予約に際して「失敗したくない」「選択に自信を持ちたい」という気持ちが強いことを見ました。
とはいえ、多くの情報があふれている中で、自分の求める旅行プランを選んで予約することは難しいものです。だからこそサービスを提供する企業としては、人々が自分の選択に自信を持てるような情報提供やコミュニケーションが重要になります。そしてそれこそがサービスのリピートにもつながっていくのです。
今回は、事前の情報収集とリピートとの関係性を明らかにしていきます。
念入りな情報収集が予約への自信になり、リピートにつながる
まず、情報収集の段階で手間をかけたと思っている人は、そうではない人に比べて「航空券・宿泊施設の予約に対する自信」がおよそ 1.2 倍高いことがわかりました。つまり、念入りな情報収集がその旅行プランに対する自信につながっているのです。
では、そのような人々は、情報収集の段階でどのような情報源を活用していたのでしょうか。
「旅行におけるアクティビティの情報収集」と「航空・宿泊に関する情報収集」の 2 つについて、どんな情報源を念入りに調べていたかを相関分析で確認しました。
まず、アクティビティに関する念入りな情報収集と相関が強いのは、「動画」「ソーシャルメディア」「マップアプリ」の 3 つです。また航空・宿泊に関しては、「旅行予約サイト」「航空会社や宿泊施設の公式サイト」「検索エンジン」の 3 つが念入りな情報収集と強い相関が見られました。
またいずれにおいても、準備段階における動画の視聴は相関が強く、情報収集に大きな影響を与えているようです。
さて、下図は旅行の情報収集に対する満足度を示しています。どのような旅行スタイルでも、満足度が非常に高い層(7 段階評価中 7 と 6)と中程度以下の層(同評価中 5 以下)が一定の割合存在することがわかります。
この満足度が高い層と中程度以下の層に分けて、航空・宿泊予約サービスのリピート意向を分析したところ、満足度の高い層のリピート意向は、そうでない層の約 2 倍であることがわかりました。
旅行における情報収集の満足度も、航空・宿泊予約サービスのリピートに大きく関係しているのです。
こうした傾向を理解する上で、2022 年に Google Japan が提唱した「肯定度」という概念が参考になります。「肯定度」とは商品選択に対する自信の強さを表す考え方です。人々は直感で商品を選択し、その後、情報探索を通じて自分の選択に対する肯定度を高めていることが、調査から明らかになりました。肯定度が高いほど購入後の満足度が高く、リピート購入にもつながりやすいことがわかっています。
以前の調査では、主に消費財について肯定度とリピートの相関を明らかにしていましたが、今回の調査を通じて、「旅行」カテゴリにおいても同様の考え方が適用できる可能性があることが見えてきました。
さて全 3 回の連載を通じて、旅行者の重視ファクターは旅行スタイルによって異なること、その重視ファクターに応じて情報収集の方法にも特徴があることがわかりました。
そしてその情報収集こそが、旅行に対する肯定度を高め、旅行の満足度やサービスのリピート利用にもつながっていきます。旅行会社や宿泊会社は、こうした生活者のニーズを満たすコンテンツやマーケティング施策を実行することが重要になりそうです。
連載「2023 年の旅行動向」
第 1 回:旅行スタイルによって、旅に求める要素はどう変わるのか
第 2 回:一人旅、家族旅行 ―― 旅行計画中の情報収集からなにがわかるのか
第 3 回:満足度の高い旅行は計画中から始まっている
Contributor:
斎藤 圭右 アナリティカルリード
朴 ヨンテ コンシューマーマーケットインサイトチーム シニア リサーチ マネージャー