人々の買い物行動がより“瞬発的”になってきていると感じることはありませんか? 知ったばかりの商品を衝動的に買う人が増えており、かつてのブランディングセオリーが通用しなくなってきています。背景には、スマホの普及などで 24 時間すべてが買い物のタイミングになったことがあります。空き時間にスマホを見て瞬間的に買いたい気持ちになり、商品を見つけた瞬間に買い物を終わらせる、といった消費行動が広まっているのです。
Google はこうした行動を「パルス型消費行動」と呼び、従来のような「ジャーニー型消費行動」と区別しました。生活者の買い物行動を観察することで浮かび上がってきた「その人なりの一貫性」を分析し、企業がいかに対応すべきかを全 4 回の連載で考察しました。
その 1:買いたくなるを引き出すために「パルス消費」を捉える
スマホの普及などにより、いつでもどこでも買い物ができるようになり、金額ベースで見ても、インターネットで消費財を購入するという行動は年々増加。「ネットか店舗か」ではなく、「ネットも店舗も」のハイブリッドの時代に入っています。そしてこうした傾向には世代の差がないことも、下図からわかるでしょう。
性年代別の EC 利用率(消費財)
人々の購買行動は、これまで「認知し、関心を持ち、欲しくなり、買う」というプロセスを経過すると考えられていましたが、オンライン上の購買行動が増えたことで、そういったプロセスを経ずに買い物をしている様子が連載で浮き彫りになってきました。
その 2:データから見えた「パルス型」消費行動
人々が「買いたい」と思う要因を調査したところ、以下の傾向が見えてきました。
(1)買う瞬間まで知らなかった名前の商品を買うことをためらわなくなってきている
(2)お店や EC サイト に行く時点では、どの商品を買うか決めていないことが多い
(3)暇つぶしにスマホを眺めている時に、偶然知った商品をその場で買うことをためらわなくなってきている
つまり、人々の中に「買いたい商品を見つけるとその瞬間に買い物を終わらせる」という消費行動が広がっているのです。Google ではこれを「パルス型消費行動」と呼び、従来のような、ある程度時間をかけて買いたい気持ちを醸成させる「ジャーニー型消費行動」とは区別しました。
この「パルス消費」は、なんとなく「ピンときた」ことがきっかけになることが多くあります。 Google では、そのトリガーを 6 つの「直感センサー」に分類しました。
その 3:消費者が「ピンとくる」6 つの直感センサー
Google が分類した 6 つの「直感センサー」は、次のとおりです。
(1)セーフティ:「より安心安全なもの」に反応
(2)フォーミー:「より自分にぴったりだと思うもの」に反応
(3)コストセーブ:「お得なもの」に反応
(4)フォロー:「売れているもの」や「第三者が推奨するもの」に反応
(5)アドベンチャー:「知らなかったもの」や「興味をそそるもの」に反応
(6)パワーセーブ: 「買い物の労力を減らせること」に反応
これらの 6 つの直感センサーは、すべて誰もが持っているものですが、状況によって反応しやすいセンサーは変化します。買い物行動に関するアンケート調査の結果から、それぞれの直感センサーの反応しやすさを集計すると、「セーフティ」「フォーミー」「コストセーブ」の順となりました。
その 4:商品ジャンルごとに購入のトリガーを比較
また、商品ジャンルによっても反応しやすい直感センサーは変わります。そこで、消費財 (ヘアケア、ソフトドリンク、ビール類、生鮮食品)と、耐久財 (洋服、車、生活家電、情報家電)における、直感センサーの反応のしやすさを比較したのが下の図です。
たとえば、耐久財では自分のライフスタイルに合っているかどうかの「フォーミー」が、「セーフティ」よりも高くなる傾向があります。また消費財では、より効率的な買い物をしたいという「パワーセーブ」の感度がやや高い傾向が見えてきました。
まとめ
デジタル化によって、いつでも、どこからでも買い物ができるようになり、多くの人は未知の商品を買うことにためらいがなくなっています。スマホで買い物の起点が発生し、なんとなく面白い情報を探すという暇つぶしのような情報検索から、偶然行き当たった情報が刺激となって直感に訴えかけてきた商品を買うという流れがあるようです。
この「探索、ピンとくる (センサーに反応)、買う(Explore - Hit - Action)」という消費行動は、これまで前提とされてきた「知って、調べて、買う (Aware - Reserch - Action)」とは順序とスピードがまったく異なります。この新たな消費行動をいかに自社の商品やサービスのマーケティング戦略に織り込んでいくか、またデジタルマーケティングがどう変わるのかが、今後の重要な課題として問われていると言えるでしょう。
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