大手からベンチャーまでさまざまな企業が、「QR 決済」(QR コードを利用した決済サービス)などのスマートフォンを利用したモバイルペイメント事業に参入した 2019 年。人々の関心も急激に高まり、市場は大きな転換点を迎えました。今後 QR 決済は生活の一部として定着できるのか、そのためにはどのようなマーケティングが必要か──。Google のマーケットインサイトチームが 2020 年 1 月に実施したモバイルペイメント利用者の実態調査の結果から見えてきた“生活者視点”のインサイトを全3回の連載で紹介しました。
その 1:QR 決済を使いたくなるには? 「使い方の理解」と「安心・安全」を
QR 決済を使いたい! と思わせるには何が必要なのでしょうか? 今回の調査では、決済事業者の積極的なプロモーションもあり、主要 QR 決済を一度でも利用したことがある人は 63% に達していたものの、今後も「できるだけ積極的に利用したい」と考える人は 23% にとどまっています。継続的に QR 決済を利用してもらうためには、何が必要でしょうか?
調査結果によると、利用を促進するにはポイント還元と同じぐらい、使い方の理解が重要だと分かりました。その次に重要なのは、セキュリティへの信頼性。単にセキュリティの不安を払拭するだけは不十分で、不正利用問題などで定着してしまった生活者の認識をコミュニケーションを通して改善し、「安心できる」というポジティブな認識の醸成が求められています。
その 2:広告、金融、会員制など4 つの収益化モデル別訴求方法
QR 決済を提供する企業の多くは、収益性の高い既存事業と QR 決済を組み合わせた収益化モデルの構築を目指しています。Google のマーケットインサイトチームでは、主な収益化モデルを「広告」「金融」「会員」「C2C」の 4 つに分類し、利用者の利用意向を分析しました。
その結果、金融モデルと親和性の高い重要ユーザー層は、「ポイント還元」に対する認識の重要性がより高く、会員モデルの場合は、「セキュリティの不安」を払拭するコミュニケーションが重要──、といった傾向が見えました。QR 決済をより積極的に利用してもらうには、収益化モデル別に訴求方法を変えていくマーケティング戦略が重要になりそうです。
その 3:なぜあの QR 決済ブランドが人気? 生活者に「選ばれる」 ブランドの条件
数ある QR 決済ブランドの中から、実際に利用するものを選択するときに何を重視するか──。QR 決済の利用意向がある人を対象に分析を深掘りすると、各ブランドの認知度は高いものの、人々が「できるだけ積極的に利用したい」と考えるブランドの数は少ないという激しい競争環境にあります。
利用者がブランドを比較する際の評価軸を、現金やクレジットカードなどの既存決済手段との比較(A)、QR 決済ブランド間の比較(B)の 2 つの方法で分析したところ、「通常のポイント還元」「対応店舗数が多い」「セキュリティが安心」とった王道指標で差がつくことが分かりました。さらに「期間限定のポイントアップ」「関連サービスのポイント利用」「提供企業への親近感」も、サービスの差別化に重要な指標であることが判明しました。
このように、生活者視点でインサイトを探っていくと、さまざまなマーケティング戦略の可能性が見えてきます。今後、モバイルペイメントが生活の一部として定着するために、どのようにマーケティング戦略が進化していくか、注目です。
そのほか Google による生活者動向の調査はこちら