技術の進化やステイホームの継続などで、IT が生活にますます浸透し、ビジネスの形や生活者の向き合い方も急速に変化しています。この変化に伴い、マーケティングの考え方もアップデートする必要があります。
今回紹介する記事では、これからのマーケティングについて、Google 社内での学びを共有しています。マーケターはもちろん、リサーチャーやデータサイエンティスト、経営者にとっても、大きなヒントになることでしょう。
1:マーケティングを俯瞰で見るために「Research」をどう考えるか:今こそ考えたい「マーケティングリサーチ」の本質
「マーケティングリサーチとは何か」と聞かれたとき、あなたならどう答えますか?
本質的なマーケティングリサーチとは、単純な調査にとどまらず、データが個別に明らかにする事実の関係性を読み解き、その背景や意味合いを検証した上で、1 つ以上の可能性や方向性を提示するものです。辞書でも、英語における Research とは、Investigation や Study を含む、包括的な概念だと定義されています。
しかし日本語では、Research も Investigation も Survey も、すべて同じ「調査」と翻訳されます。この表現のズレこそが、日本におけるマーケティングリサーチ、さらにはマーケティングリサーチャーの役割を停滞させ、その責任を曖昧にしてきた原因なのではないか、という考えに至りました。
現在、多くの企業で、統計分析やデジタルマーケティングの機能、あるいはマーケティングダッシュボードなどは整っているかもしれません。しかし、そうしたダッシュボードなどが指し示す可能性を読み解き、それに沿った行動を取るのは、そう簡単ではありません。
マーケティングリサーチの機能を本来の意味で十二分に活用するためには、何が必要なのでしょうか。連載「今こそ考えたい『マーケティングリサーチ』の本質」では、現代のマーケティングリサーチのあるべき姿と具体的な方法について数回にわたって考えていきます。
2:“ ローカライゼーション ” に Google はどう向き合うか——総論編:Inside Google Marketing
IT によって、国境を越えたビジネスがますます広がっていますが、言葉も文化も異なる国での展開は、簡単ではありません。ある国ではうまくいっても、別の国では別の工夫が必要になることもあります。
グローバル企業である Google も、そうした “ ローカライゼーション ” の課題に何度も直面してきました。その課題は、大きく分けて次の 2 つです。
1 つ目は、マーケティングリサーチにおける言葉の問題です。グローバルで同じ調査を実施する場合、文脈への考慮が欠けた直訳や対象地域に関連のない項目、馴染みのない単語を使用したりすると、調査から導かれる結論も誤った結果になってしまいます。
例えば英語の「Personal life」は、通常なら「私生活」と訳してもまったく違和感ありませんが、調査の設問の中であれば「あなたの普段の生活」と回答者の視点を考慮した翻訳の方がより適切だと言えます。
2 つ目は、広告表現や社内外の関係者に共有する資料内の表現に関するローカライゼーションです。海外では一般的であるものの、まだ日本語にマッチする単語が存在しない新しい概念を伝えたい場合、それをどう表現するかといったことです。
例えば Inclusion は英語圏では本来「行動を促す」という文脈で使われることが多いですが、単にカタカナの「インクルージョン」でその意味を伝えるのは難しいでしょう。こうした言葉の意味を明確にすることで、コミュニケーションが円滑になり、関わる人全員が共通認識を持って同じ方向を向けるようになるのです。
こうしたローカライゼーションの課題と対処法を、「総論編」「調査編」「言葉編」の 3 本を通じて、Google の実例を交えながら考えていきます。
3:今、生活者と IT の向き合い方は? ウェルネス型、トライ型、ミニマル型……7 つのクラスタで考える
これまで生活者の IT に対する意識や行動は、リテラシーの高低、新技術やサービスの受容度など、単純に高いか低いか、あるいは受け入れているかいないかといった 2 項対立的な見方で理解しがちでした。しかし世の中にさまざまな IT ツールがあふれる中、それだけの見方で済ませてしまってよいのでしょうか。
それぞれの人にとってのより良い IT のあり方を理解するために、Google では 2021 年 6 月に Web アンケート調査(*1)を実施。その結果を基に、「IT との向き合い方」によって生活者を 7 つのクラスタに分類しました。
それが「ウェルネス型」「トレンドフォロー型」「トライ型」「ディスタンス型」「アクセプト型」「ミニマル型」「クリティック型」の 7 つです。
記事では、クラスタ別にその特徴を解説します。従来の切り口ではうまく説明できなかった、IT に対する人々の態度や行動を考察しました。
4:エンタメ領域では可処分時間の奪い合いがない? 生活者調査から見えたヒント、「競争」よりも「共存」
アニメやゲーム、漫画、音楽といったエンターテイメントのコンテンツが、タブレットやスマートフォンでまとめて楽しめる時代になりました。サブスクリプションモデルも普及し、デジタルエンタメサービスの市場規模は大きく成長しています。
エンタメのビジネスモデルが大きな転換を迎える中で、人々の利用動向はどう変わっていったのでしょうか。2020 年 10 月に実施した Google とインテージとの共同調査(*2)からと、2 つのトレンドが明らかになりました。
1 つ目は「エンタメ領において複数のカテゴリをまたいで利用する人が増えており、カテゴリ間での可処分時間の奪い合いが “ ない ”」ということです。「漫画と動画」「漫画と動画と音楽」など、併用するデジタルコンテンツのカテゴリが増えても、それぞれにかける時間は必ずしも減っているわけではありませんでした。
もう 1 つは、どの領域にも共通して 2 種類のユーザーがいるということです。コンテンツにはこだわらずに余暇を過ごすためにデジタルエンタメを使う「サービス利用型」と、特定のコンテンツを集中的に体験したい「作品ファン型」です。
記事では、調査結果を詳しく解説し、ヒットコンテンツを生み出すヒントを抽出。どちらか一方に集中する「or」ではなく、共創、共存の「and」の考え方が重要になっている背景を解説します。
以上 4 本を通じて、Google の調査結果や、社内での取り組みから見えてきた学びやインサイトを共有しました。
Think with Google は、マーケティング業界に携わる人々に向けて、世界 20 カ国以上で展開している Google のオウンドメディアです。調査に基づいた最新の生活者インサイトや、デジタルマーケティングの事例、動向などを紹介しています。
この下に表示している「あなたへのおすすめ」から、他の記事もぜひご覧ください。