2021 年上半期は、新型コロナウイルス感染症の影響が続く一方で、国内でもワクチンの接種が始まり、感染の収束後を見据えたマーケティングを考えるタイミングにもなりました。また 2020 年から引き続き、人種や性別の多様性についての議論も注目を集めました。
こうした変化に、企業やマーケターはどのように対応し、今後にどうつないでいけばよいでしょうか。
今回は、2021 年上半期に US 版 Think with Googleで、読者のエンゲージメント率(*1)が高かった記事 5 本の概要を日本語で紹介します。全文(英語)は各リンク先からご覧ください。
変化した動画視聴 ブランドが適応するには
英語版の元記事:5 ways brands are adapting to shifts in video viewership to drive results
著者:デビー・ウェインスタイン VP of YouTube/Video Global Solutions
2020 年は動画視聴の転換点となりました。ストリーミングサービスを利用し、動画コンテンツをテレビで見る人も増えました。
(*2)
YouTube 広告がきっかけで、製品を購入する人も増加しました。
米国、メキシコ、コロンビアの視聴者の 70% が、YouTube 広告をきっかけに商品を購入したと回答(*3)。視聴者の行動を促すことに特化した「TrueView アクション広告」は、年間約 10 億件のコンバージョンを生み出しました(*4)。
不況下では、ブランディングのための広告予算は最初に削られる傾向があります。しかしブランドへの投資は、長期的な成長には不可欠です。動画広告は、そうしたブランド構築にも貢献することが証明されています。
20 の消費財ブランドの売上とブランドリフトのデータを分析したところ、ブランドリフトの指標が売上に与える長期的な影響を考えると、広告の ROI(投資利益率)が 84% も大きくなることがわかりました(*5)。YouTube を活用したブランド構築は特に効果的で、リフト指標は従来のテレビ CM と比較して平均 2.1 倍にもなります。
さらに効果測定の重要性も増しています。過去の経験に頼るのではなく、効果を見ながらタイムリーに広告を最適化するなど、データ中心のアプローチに軸足を移すことが重要です。
感染拡大で変わったこと、定着すること
英語版の元記事:Pivots from the pandemic that are here to stay
著者:ザーマー・ハーディモン Editor, Think with Google
コロナ禍で何が変わり、感染の収束後も定着する変化とは何でしょうか。
2020 年に起きた 4 つの大きな変化
まず人々の検索動向が変わりました。ロックダウンが厳しかった初期には、店舗で品薄だったアルコール消毒液やトイレットペーパーなどに関連した「in stock(在庫)」の検索が、2019 年比で 8,000% 超の急増(*6)を見せました。
制限された生活が長期化するにつれて、人々はつながりを育む方法も模索し始め、「with friends online(オンラインで友達と)」を含む検索が増加(*7)。そしてこうした検索は、そのまま定着しました。
オンラインショッピングも当たり前になりました。食料品、衣料品、さらには車までオンラインで購入したいという人が増えました。2018 年にオンラインで販売された車の数はわずか 1% でしたが、2020 年上半期には 10% 近くがオンラインで売れました(*8)。そういった、消費者に適切に提案できるマーケティング計画は、今後も重要です。
感染拡大に端を発した混乱と不確実性は、まだ残っています。企業は未来を見据え、消費者の需要が変動し続けている場合でも、需要に最もよく応えられる方法を熟考する必要があるでしょう。
LGBTQ+ 表現のあり方は、ゲーム業界から学べる
英語版の元記事:What brands can learn from LGBTQ+ storytelling in gaming
著者:マリアンナ・ナッシュ Editor, Think with Google
メディアにおける LGBTQ+ の表現は、ここ数年で大幅に成長しました。
2020 年の LGBTQ+ に関する GLAADメディア・アワードの「Outstanding Video Game Award」部門に、例年の 2 倍の候補者が集まったことを見ても、ゲーム業界が LGBTQ+ の表現に対して、前進していることが見て取れます。
記事では、ゲームにおける LGBTQ+ の表現から、ブランドがマーケティングに応用できる教訓を紹介しています。
LGBTQ+ コンテンツを含むビデオゲームの数
まず、主人公が LGBTQ+ で、プレイヤーも LGBTQ+ 視点でプレイできるゲームが注目を集めました。受賞した「Tell Me Why」は、主人公とその声優がトランスジェンダーで、同じく受賞作の「The Last of Us Part II」はレズビアンが主人公でした。
単にゲームに LGBTQ+ のキャラクターが登場しているだけでなく、プレイヤーは LGBTQ+ の目線で主人公の視点や悩みなどを、ゲームを通じて体感できるのです。
一般的にゲーム業界は、白人で異性愛者の 18 〜 35 歳男性ゲーマーが多いといった固定観念があります。しかし実際には、ゲーマーの 10% が LGBTQ+(*9) であり、46% が女性(*10)で、ヒスパニック系の人々が最も多く“ゲーマー”を自称しています(*11)。
こうした表現を正しく行うことは、目先の収益以上に重要です。LGBTQ+ の若者の 58% は、LGBTQ+ コミュニティへの支持を表明するブランドや企業がいることで、自分が LGBTQ+であることにポジティブな影響を与えると回答。また多性愛者の若者の半数も、ブランドについて同じように答えています。
プライバシーとマーケティング効果を両立させるには
英語版の元記事:5 pillars of a holistic marketing measurement plan
著者:カレン・ストック Managing Director, Global Measurement Solutions Google
顧客のプライバシー保護とサードパーティ Cookie の規制は拡大しており、マーケターは、プライバシーを守りながら KPI を達成しなくてはならないという、難しい挑戦を迫られています。
そのために重要なのは、まず自社のファーストパーティデータを有効活用することです。たとえば、ロイヤルカスタマーの購入パターンを把握すれば、適切な時期に効果の高い広告を提示するなどが可能です。
顧客の同意を取る際に、どのようなデータがどのように使われるのかを正確に説明することも重要です。プライバシーポリシーの文言を、顧客にとってよりわかりやすく変えることも大切でしょう。
複数のプラットフォームで顧客とコミュニケーションをとっている場合は、プラットフォーム間を横断した分析によって、有効なインサイトを導き出せるかもしれません。カスタマージャーニー全体にわたるコンバージョンの測定は難しくなっていますが、機械学習を利用したモデリングならば、複数のデバイスをまたぐコンバージョン経路を定量的に分析できます。
優先順位を付けて効果測定のためのインフラに投資するなど、適切な準備ができれば、新たな規制の下でも、利用者のプライバシーを守りながらデジタルキャンペーンを効果的に測定し、以前よりも多くのインサイトを引き出せるでしょう。
1 万 2,000 人の顧客テストから学ぶ、検索広告のアップデート
英語版の元記事:12K shoppers showed us how to supercharge Search ads
著者:アリスター・レニー Research Lead – Thought Leadership, EMEA, Google、シアン・デイビス Co-founder, The Behavioural Architects
消費者は商品を購入する際、膨大な量の選択肢と情報を比較します。お気に入りのブランドを購入することもあれば、検索結果で気になった別のブランドを買うこともあるでしょう。
迷っている消費者に自社の商品を購入してもらうには、行動科学のアプローチが効果を発揮します。
Google と調査会社 The Behavioural Architects は共同で、12 の商品について調査をしました。同意を得た 12,000 人の買い物客を対象に、およそ 1 カ月間、継続的な 96,000 回のシミュレーションを実施(*12)。調査では、検索結果の適切な場所に商品を配置するための具体的な戦略が明らかになりました。
まずは、人々が検索する場所に存在することが重要です。買い物客のお気に入りのブランドと 2 番目に好きなブランドの両方に、同じ広告コピーを使用した場合の検索結果をシミュレーションしました。
たとえば、保湿剤を探していた買い物客の検索結果に、2番目に好きなブランドの広告を表示したところ、検索結果の 3 番目で、お気に入りのブランドの下にあったにもかかわらず、31% の広告クリックを獲得しました。
重要なのはページの一番上でなくても、検索結果に存在していることが重要だということです。
また検索広告で有効な戦略の 1 つが、「行動科学の原則」を活用することです。
テストでは実在のブランドや架空のブランドの商品について、以下の 5 つの原則を使って、広告コピーを変えながらテストしました。
- 無料の力:無料のアイテムやクーポンの提供は購入の大きな動機になります
- 権威づけ:専門家や信頼できる情報源のお墨付きは、競合他社との差別化に有効です
- 社会的証明:レビューなど特定のグループ内で「他の人も良いと言っている」ことで説得力を高めます
- フレーミング:商品の“枠”を変えることで、その価値を強調できます
- 高額なシグナル:たとえばスーパーボウルへ広告を出すことで、商品のプレミアム性をアピールできます
実際の検索ページと同じようなシミュレーションページで、顧客に対して、一番好きなブランドと 2 番目に好きなブランドの広告、そして同じ製品カテゴリーの架空のブランドの 3 種類の広告を表示しました。
すると、これらの原則を 1 つ以上利用することで、認知されていない架空のブランドでも、消費者の広告クリックを得られたのです。
十分に確立された既存のブランドであっても、新規に立ち上げたブランドであっても、検索をうまく利用することが重要です。行動科学に基づく広告コピーや、自動化ツールを組み合わせることで、消費者の購入経路の複雑さにも、効率的に対応できるはずです。
Think with Google は、マーケティング業界に携わる人々に向けて、世界 20 カ国以上で展開している Google のオウンドメディアです。本記事はUS版の記事を取り上げましたが、日本でも、調査に基づいた最新の生活者インサイトや、デジタルマーケティングの事例、動向などを紹介しています。
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