幅広い年齢と属性の人が利用する YouTube 、適切な層にリーチすることで高い広告効果
YouTube は世界で 20 億人が利用しており(*)、年齢や属性を超えて幅広い人がコンテンツを視聴しています。そのため、特定の属性に絞ったキャンペーンであっても一定のリーチ獲得を見込めることが大きな特徴です。
Google は 2019 年 11 月に、広告主や広告関係企業に向けたイベント「Brandcast」を開催。YouTube の利用実態、企業やアーティスト、タレントによる活用事例などを紹介しました。
今回はその中から、ソフトバンク株式会社とサントリーコミュニケーションズ株式会社の YouTube 活用事例を紹介します。
なお、視聴者が YouTube を利用する 5 つの動機と、それを捉えて高い広告効果を獲得した企業の事例については、こちらの記事にまとめていますので、合わせて参考にしてください。
「YouTube はスモールマス戦略に適している」ソフトバンク牛田氏
ソフトバンクの牛田裕章氏(コミュニケーション本部 コミュニケーション統括部 統括部長)は、YouTube の最大の魅力はリーチのみならず、動画を届ける視聴者のきめ細かなカスタマイズ、その後のアクションへの誘導といった要素がそろっていることだと言います。
ソフトバンクは 2019 年 1 月から、「ギガ国」と題したコミュニケーションフレームを展開。テレビ CM に加えて、YouTube でも積極的に配信した結果、インクリメンタル(純増)リーチが全部のユーザー層で伸びました。とくに狙っていた、20 代から 30 代男性へのリーチは 15% 増と、大幅に増加しました。
サブブランドの「Y!mobile(ワイモバイル)」では、Google チームと協力し、格安スマホに関心をもつ層について詳細に分析して、6 つのセグメントごとに異なるクリエイティブを展開。その結果、視聴率は 10% 増、クリック率も 30% 増となりました。
このように YouTube は、情報を届けたい相手に、細かく適切にリーチできるため、スモールマス戦略にも向いています。また直接的なアクションにも誘導できます。たとえば「iPhone」の新モデルが登場したときに、TrueView アクションを活用したことで、オンラインショップの予約数が、広告非接触者よりも接触者のほうが 17% も多いという成果を得ました。
またソフトバンクの大容量プランは、データ容量に余裕があるので、音楽と親和性が高いサービスです。そのため YouTube と連携して、「FUJI ROCK FESTIVAL」や「サマーソニック」といった音楽フェスの YouTube 配信への協賛するなどに取り組みました。配信は、同社の想定をはるかに超える視聴数を記録。これにより、音楽好きの人に YouTube を通して大容量プランを直接プロモーションでき、非常に有意義なものになったと牛田氏は述べています。
「お客様と深い絆を結ぶこと、好きになってもらうこと。そのために YouTube が強い役割を果たしている」サントリー鈴木氏
サントリーコミュニケーションズは、ほぼすべてのブランドで YouTube を活用しています。同社の宣伝部長(当時、現在はサントリースピリッツ 執行役員RTD・LS事業部長)を務める鈴木あき子氏は、テレビや新聞、交通広告などで十分に成果が出ていた 20 年前と比べて「メディア環境が激変している現在は、従来のやり方ではメッセージが届きにくくなっている」と話します。
「サントリー天然水」では、テレビ CM と YouTube を併用。テレビでリーチできないインクリメンタルリーチを最大化しており、他のブランドでも同様のことをしていると言います。
しかしファンと強いエンゲージメントを築き上げるには、リーチだけでは不十分です。そしてその点においても YouTube は重要で、「お客様と強い絆を結ぶこと、好きになってもらうこと。そのために YouTube が強い役割を果たしていて、トライブやスモールマスと呼ばれる一定数のお客様ごとの興味関心に寄り添ったコンテンツを届けることで、より強いエンゲージメントを獲得することに挑戦している」と鈴木氏は話します。
例えば、「働く人の相棒」をコンセプトにした缶コーヒー「BOSS」の動画広告がその 1 つです。YouTube では東宝や東京メトロとコラボレーションし、ひとつひとつの仕事にスポットライトを当てた動画広告を展開しました。
東宝株式会社の協力を得て制作した「ゴジラ」とのコラボ動画では、初代「ゴジラ」の「中の人」を務めた中島春雄氏の生き様を動画に表しました。また、東京メトロとのコラボレーションでは、銀座線の引退車両を自動販売機として再活用する、というストーリーの動画を作りました。
このような内容を親和性の高い人へと届けた結果、ゴジラの動画広告では「好意度」が 7.7% 増、東京メトロの動画広告では「広告想起」が 11.2% 増(*)となりました。
さらに、サントリーという企業自体のファンになってもらうため、バーチャル YouTuber「燦鳥ノム(さんとりのむ)」のプロデュースを開始しました。「燦鳥ノム」は 2018 年 8 月に活動を開始。10 分前後の動画を毎週 1 〜 2 本程度のペースで公開してきました。その結果、チャンネル登録者数 11.7 万人に達するほどの人気で、動画の総視聴回数も 1300 万回(※登壇時点での数値)を突破。多くの人に愛される存在となり、グッズ展開やテレビ、イベントへの出演機会なども増えています。
「燦鳥ノム」のファンの中には、サントリーを応援するために、製品を箱買いする人も現れるなど、鈴木氏も驚くほどの新しい発見がありました。「YouTube は今やサントリーのマーケティング戦略上、欠かすことのできないメディアになっている」と鈴木氏は話しました。
次回は、マーケターとは少し角度を変えて、動画を公開しているパートナーやアーティスト、クリエイターの目線から YouTube の活用法やその工夫を紹介。YouTube クリエイターの kemio 氏やアーティストの YOHSIKI 氏、さらにはサンライズやパシフィックリーグマーケティングといった企業の事例を取り上げます(近日公開)。