世界的に新型コロナウイルスの脅威が高まる中、私たちの生活環境は日々大きく変化しています。日本では、2020 年 2 月 27 日に出された政府からの要請により、3 月初めから多くの学校が「一斉臨時休業(休校)」の措置をとりました。また、テーマパークの休園や大規模イベントの中止や延期が相次ぎ、外出を控えるムードも高まっています。一方で、マスクやトイレットペーパーといった生活必需品が品切れを起こしたり、食料品も一部品薄になったりと、安定した在庫が確保できない状況でもあります。
経済の先行きも不安定になり始めている今、国内の関心はどのように移り変わっているのでしょうか? Google トレンド などの検索動向を見ながらまとめてみました。なお、この内容は 2020 年 3 月 22 日 までの状況やデータをもとにしています。
新型コロナウイルスに対する関心のピーク
2020 年 1 月に入り、中国で新型コロナウイルスの広がりについての報道が徐々に目立ち始めました。新型コロナウイルスに関する検索は、中国の国家衛生健康委員会が「ヒトからヒトへの感染が認められる」と発表したことや、中国での死者数が 2 桁(17 人)に増加したこと、さらには米国で初の感染者が公表された 1 月 21 ~ 22 日頃に検索が増え始め、1 月 30 日には最初のピークを迎えます。そして、2 月 27 日に 2 回目のピークを迎えました。
最初の検索ピークは、政府チャーター機による武漢在住の日本人が帰国したときに、国内の報道量が増えたことが起因と考えられます。その後、一旦検索量は落ち着きます。次に関心が高まった 2 月 27 日は、政府によるイベント自粛や規模の縮小、全国すべての小学校や中学校、高等学校、特別支援学校について休校の要請が出たタイミングでした。
検索動向「新型 コロナウイルス」
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ではこの期間で、生活者の意識や興味はどのように変わったのでしょうか。「日常生活を円滑に進めるためにどのような情報収集をしたか」「レジャー施設の休業が相次ぐ中、どのように余暇時間を過ごそうとしたか」「3 月の季節イベントに対してはどのように臨もうとしたか」の 3 つの側面から見てみましょう。
日常生活における情報収集の変化
まず 2020 年 2 月 28 日に「ネットスーパー」の検索が大きく伸びました。この日は、政府による学校の臨時休校の要請が出された翌日です。
検索動向「ネットスーパー」
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ここには、「ネットスーパー」という単語で検索する人もいれば、特定のネットスーパーを指定して検索する人もいましたが、瞬間風速的に検索量が増加し、通常に戻る傾向が見受けられました。一度見つければ、そのネットスーパーの利用が定着するからでしょう。また、通常では検索されにくい「惣菜」「弁当」といったすぐに食べられるものや、「冷凍食品」「洗剤」といった食材や日用品などと掛け合わせて検索されたことも特徴的で、これまで EC で購入していなかった人もこうした食材や日用品を購入しようという意識・行動が高まったと考えられます。
学校の休校に伴い、子供の昼食をどうするかというニーズ、併せて外食がなかなかしづらい環境になっていることを背景に、「レシピ 検索」が顕著になった点もこのタイミングで確認できました。
昼ご飯や晩ご飯に関して、「xx(場所名) ランチ」「xx(場所名) ディナー」という検索が減少する一方で、3 月に入ってからは「テイクアウト」「持ち帰り」も伸びています。これらの言葉は外食チェーン店と掛け合わされることが多く、消費者が頼りにする存在になっていることがわかります。それと同時に、「お持ち帰り 近くの店」という検索も上昇しており、商圏にある飲食店にとっては、新たな機会につながる可能性もありそうです。
検索動向「テイクアウト」「持ち帰り」
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学校休校に伴う子供関連の検索も伸びています。代表的なのは「学童」。学童が空いているかどうか、その対応はどうなるのか、学童情報を集める人が多かったようです。興味深いのは、休校初日の 3 月 2 日に少し山がある点です。もしかすると、初日を経験して、「子供を託せるところがあれば…...」という気持ちが反映されたものかもしれません。
検索動向「学童」
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同時に「オンライン学習」に対する検索が高まりました。これは、YouTube 内の検索でも顕著となっており、以前から活躍していた、オンラインでの勉強を推進する YouTube クリエイターの存在感が高まっています。例えば「とある男が授業をしてみた」 や 「QuizKnock」は、自宅学習の強い味方として支持を集めています。
余暇時間をどう過ごすか
もともと 2 月は、寒さが厳しくなるので、室内でどのように過ごすかを意識したような検索が高まる傾向にあります。2020 年は感染予防という要因もあり、ゲームや漫画といったコンテンツを探す傾向がより高まりました。さらに特徴的なのが、「家の中でのエクササイズ需要」です。リモートワークの影響で、運動不足を感じる人の心情を表したかのように、「バランスボール」の検索が増えました。そして以前人気を博していた「ビリーズブートキャンプ」も、テレビ番組での報道と掛け合わせ、YouTube 内検索で上昇していることが確認できます。
YouTube 内 検索動向「ビリーズブートキャンプ」
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興味深いのは「旅行」に関する動向です。新型コロナウイルスによる影響は、旅行業界に大きな影を落としており、「海外旅行」に関係する検索は急激に減少しています。一方で日本における「国内旅行」の検索は、例年とそこまで変わらない推移を保っています。
国内旅行に包含されるかもしれませんが、「キャンプ」の検索も上昇傾向が見受けられます。インバウンド旅行者や日本からの海外旅行は厳しい状況ですが、外出が難しいながらも日本人の国内旅行、特に混雑を避けた環境を意識した旅行を計画している様子が見てとれます。
検索動向「キャンプ」(過去三年比較)
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季節的なイベントに対する検索は変わらず
最後にもう 1 つ。こうした状況であっても「季節的なイベント」に対する興味の度合いは変わらないようです。卒業式に関しては、例年よりも少し多めの検索量推移となっていました。これはもちろん、「中止になるのか」「どうのような対策をすればいいのか」といった今年特有の検索が上乗せされたと考えられますが、大部分は「服装」「髪型」「袴」といった例年通りの言葉とともに検索されています。大切なモーメントはどんなときでも変わらないようです。
検索動向「卒業式」
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3 月 14 日 のホワイトデーも、外出自粛やリモートワークが続く中で、例年と同じような検索量推移でした。関連して検索されているものも「お返し」「人気」「チョコ」「お菓子」「プレゼント」であるように、特徴的な単語に結びついた検索が大きく伸びたということはありませんでした。
今回、公開されている Google トレンドで仮説を出しながらグーグルのビジネスインサイト & アナリティクスチームが深掘りし検証。それと掛け合わせて、検索推移から見てとれた速報をまとめてみました。このような検索動向は、今を客観的に把握するには、もちろん有用です。と同時に、もしかすると今後変わっていくかもしれない、という兆しも見てとれるかもしれません。
私たちは、さまざまな情報が飛び交う中で、自分たちの考えや仮説をこのような形で確認していく、整理していくことも大切な視点だと考えています。
なお、この内容は 2020 年 3 月 22 日 までの状況やデータをもとに執筆しました。今後も、継続してこのような分析や動向を私たちのチームからお伝えしていきます。
Contributor:
アナリティカルリード 斎藤 圭右 / データアーキテクト 檜垣 貴友