前回は、人々の情報探索行動は「(スピードの差はあるものの)段階的に購買という 1 点に向かっていくものである」という前提に対して、No を突きつけるログデータ分析の結果を見ました。自分の情報探索行動を振り返ってみても、当てはまる人が多いと思いのではないでしょうか。
従来の情報探索行動モデル
つまり多くの場合で、情報探索行動は、現れたり消えたり、期間を空けて思い出したようにまた現れたり、また「このタイミングでなんでまたそれを調べるの?」「結局、何も考慮していなかったそれを買っちゃうの?」など、マーケター側からするといわば“ちゃぶ台返し”のような行動が多発していることがわかってきたのです。実はこういった不規則な情報探索行動は、日本のみならず、アメリカ、ヨーロッパにおける調査の結果からも同様な発見がなされています。
情報探索行動のリアル
とある人の「新婚旅行」に関連した検索を分析
たとえば下図を見てください。これは、とある人が新婚旅行に行くことを思いたってから予約し、実際に渡航するまでと、その後の行動をプロットしたものです。この人は新婚旅行を考え始めてから 231 回、新婚旅行に関連した検索をしています。これは、今回の調査対象の中で多くも少なくもありません。
この人は、そもそも 2019 年 6 月ごろには新婚旅行に行くことを決めていましたが、実際に旅行のことを考え始めたのは 2018 年 1 月くらいからだと言います。
そのころは、ガイドブックの立ち読みやさまざまな旅行サイトを気の向くままに見ている状態だったそうです。その後、お相手の要望だったギリシャについての知識を得ようと、情報検索をはじめました。
そのときの検索キーワードは、ホテル名であったり、ギリシャの中でもサントリーニ、ミロスなどといったビーチリゾートに関するものだったり、非常に具体的な検索でした。またその時点で、予約サイトにも何度も訪問していたようです。
現れては消えるを繰り返す情報探索行動
ここで一旦情報探索行動は途絶えますが、その後に相手からバリ島はどう? との問いかけがあったため、バリ島についても同様に検索したようです。実はこれについては、検索の記録にはありましたが、本人に聞いたときには、このバリ島に関する検索行動についての記憶がまったくないようでした。
本人にとって自分事ではなかった行き先に関しては、探索行動をしていたことすら忘れていることがわかったのです。そしてここでまた、情報探索行動は途絶えます。
3 月は入籍、引っ越しという一大事を終え、新婚旅行をより現実的に考える必要に迫られたと言います。にもかかわらず、情報探索行動はこの期間、なぜか静まります。その後 4 月に入って、いよいよ新婚旅行に関する情報探索行動がより多く見えてくるようになりました。
このときのことを聞くと、この空白期間、彼女は相手に 1 つ譲歩していて、旅行の日程については相手に合わせる代わりに行き先をハワイにする、という交渉をしていたと言います。その上で、ようやくハワイ関連の情報を具体的に検索し始めたいうのです。
そこからは、またホテル名や行き先など、ギリシャやバリ島に関して調べていたときとほぼ同じことをハワイについて調べ始めた後に、旅行先でのアクティビティ関連を調べて予約を終わらせたところで、また情報探索行動は静まります。
渡航直前にはパスポートやビザの確認などのため、彼女の検索行動は量的にピークになり、帰国後にはシミ対策など、別の情報探索行動が始まっていました。
実を言うと、彼女は今回、1 年半ほど旅行に関する情報探索行動を取っていましたが、もともと 2017 年にハワイに行ったときに、すでに新婚旅行はハワイと決めていたとのこと。つまりその時点で一度心に決めていた、つまりパルスしていたとのことでした。その上で彼女は、結局最後までこの気持ちを貫き通したわけです。検索ワードだけを見ると、同じような情報探索行動をしていたと思えるギリシャやバリ島も、ハワイの決断を後押しするためだけに行われた情報探索行動だったようです。
情報探索をかき立てる 8 つの動機
こういった個票分析をさまざまなカテゴリーで繰り返す中で、さらに見えてきたことがあります。それは無秩序な情報探索行動に人々をかき立てる理由として、8 つの潜在的な動機があるということでした。それが下図です。
情報探索をかき立てる 8 つの動機
皆さんにも当てはまるものがあるのではないでしょうか。次回は、これらの情報探索行動から生み出した新たなフレームワークを紹介します。