多くのマーケティング担当者にとって広告クリエイティブのコピー制作は悩みの種です。
なぜなら、デジタル広告におけるコピー制作は、文学などの芸術とは異なり、マーケティング担当者にとってビジネス成果に結びつくクリエイティブが求められます。また、コピーが与える印象は生活者個々人によって異なり、一つのクリエイティブで全ての生活者に最大の効果を与えることは不可能です。
しかし、機械学習などの技術の進化によって、クリエイティブ製作についても次の事が可能になってきました。その一つに Google の日本チームが生み出したワードミックスモデル(Words Mix Modeling 、WMM)と呼ばれる施策が日本の多くの企業に浸透し始めています。この技術には、Googleのマーケティング分野だけでなく、クラウド領域で活用されている Natural Language API 技術が応用されています。今回は、この機械学習を応用したクリエイティブコピー制作が、どの様に日本のマーケティングを進化させているのかをご紹介したいと思います。
- 過去の広告クリエイティブコピーデータを機械学習を用いて分析
- 最も効果があった(クリックに寄与したなど)単語を抽出
- 最も寄与度が高い単語を元に新しい広告クリエイティブコピーを作成、自動出稿(と結果に基づく継続的な改善)
実際にこの技術を導入したエイビーロード(株式会社リクルートライフスタイル運営)では、クリック数 +53% だけでなく、コンバージョン数(自社サイト経由問合せ数など) +44% を実現しました。
オンラインを専業とする海外旅行・海外ツアー比較検討サイト、エイビーロードにとって、デジタルマーケティングの最適化を図ることは、事業の生命線とも言える重要な施策の 1 つです。同社では、検索広告において既にGoogle 推奨の AdWords 基本設定を対応し終え、次の大きな課題の一つとして、クリエイティブ最適化を検討していました。
これまでは、長年の経験に裏打ちされたクリエイティブを作成して、クリック数などに応じて手作業で最適化を図っていましたが、年々増え続けるキーワードの種類やユーザー情報によって、手作業で最適化をし続けることに限界を感じていました。
そこで、この技術を導入したテストキャンペーンにおいて、インプレッション数 44% 増に対し、クリック数 53% 増、コンバージョン数も 44% 増と、競争の厳しいオンライン旅行業界において、大きな成果を上げる事ができました(下図参照)。
また、この動きは小売、自動車、ITなど幅広い業界に浸透してきました。
テクノロジーソリューションを提供しているデルでも、マーケティング活動の中で過去の広告クリエイティブコピーを分析し、「A と B、どちらのクリエイティブコピーがいいか」ではなく、「クリエイティブコピーの中のどの単語が広告クリック率上昇に寄与したか」を明らかにすることで、より成果に結びつくクリエイティブコピーを作成することができました。結果として、クリック率を最大 38% 上昇させる事に成功しています。また、ワードミックスモデルと一緒に、広告バリエーションを活用することで、コピーのテストに要する時間を短縮でき、継続的な成果の向上に取り組むことができています。
この様に、広告クリエイティブ分野にも機械学習を活用することで、様々な生活者に関連性の高いクリエイティブコピーを自動的に作成し、改善し続けることが可能になっています。