一人ひとりに最適化されたマーケティングの可能性
一人ひとりに最適化されたマーケティングは、世の中のマーケター達にとって重要な関心事です。また、自分に最適化されたメッセージは生活者たちにとっても望ましいことです。Googleでも、ユーザー一人ひとりに合わせてメッセージを届けるといった取り組みに力を入れてます。例えば、Google Now では、ユーザー一人ひとりに応じた情報の提示(好きなサッカーチームの試合速報など)を行ってます。
一人ひとりに最適化されたマーケティングの実現を阻む
3 つの障壁
一人ひとりに最適化されたマーケティングというコンセプト自体は数年前から存在しており特別目新しいものではありません。しかし、その実現にはいくつもの障壁があります。下記に企業が直面する 3 つの代表的な障壁を紹介します。
1:データの統合・整備
一人ひとりの状況に最適なメッセージを届けるためには、データの力が欠かせません。企業内には 販売情報データ、顧客データ、サイト解析データなど様々な利用価値の高いデータが存在します。一方でそのようなデータを広告活用できる状態に統合・整備できている企業はごく稀です。
2:一人ひとりの状況に応じたメッセージ選定
有益なデータがあったとしても、メッセージ(誰に何を訴求するのか)を一つずつ人力で作成するのでは作業負荷が大きすぎます。例えば、対象顧客が 100 万人、対象商材が 1,000 種類存在するようなケースがあったとします。このような場合、「 10 万人の顧客ひとり一人に最適な商品をマニュアルで選定」することは現実的と言えません。
3:選定されたメッセージに応じたクリエイティブ制作
顧客それぞれの文脈に応じたメッセージを配信するということは、大量の広告クリエイティブも必要になります。上述のように仮に 1,000 種類の商品が対象となる場合では、1,000 種類のクリエイティブを作成する必要性が生じます。これも、通常のクリエイティブ制作体制では対応できそうにありません。
ニトリでも、一人ひとりに最適化されたマーケティングという課題は存在していたものの、上述の障壁もあり実現には至っていませんでした。しかし、今回 Google との共同プロモーションという形で、取り組んでみることとなりました。
Google マーケティング プラットフォームと
Google Cloud Platform ( GCP )を活用することで
3つの障壁をクリア
今回は、上述の障壁をクリアするために様々な Google プラットフォームを活用しました。
・Google アナリティクスを活用したデータ統合・整備
今回の Google との共同プロモーションでは、サイト解析ツールである Google アナリティクスのデータを分析に活用した上で、広告配信に反映することにしました。
Google アナリティクス上には、どのようなタイプのユーザーがどういった商品を購入したのかといったデータが集積されている点に着目しました。
・TensorFlow (機械学習ライブラリ)を活用したメッセージの選定
Google アナリティクスのデータをビッグデータ解析プラットフォームである Google Cloud Platform( GCP )Big Query に連携しました。その上で Google の機械学習ライブラリ TensorFlow を活用し、広告配信対象となる”ユーザー毎にもっとも購入確率が高いと考えられる商品を予測”させました。
今回は、地域、時間帯、曜日、OS といった情報を用いてユーザーを 1,128 のバリエーションに分類しました。1,128 のバリエーションに応じ TensorFlow を用いて最適な商品を選定しました。
・メッセージ バリエーションに応じた広告クリエイティブの作成
バリエーションごとに最適なバナー クリエイティブを新規で作成するのは作業負荷が高いと判断し、Google マーケティング プラットフォームのスタジオを活用しました。スタジオを活用することでアニメーション バナーの 1 枚目の商品画像を自動で入れ替えるということが可能になります。商品画像は、Google Merchant Center 向けに作成したフィードの情報を参照することで、バリエーションに応じたバナー クリエイティブの作成工数を最小に抑えることができました。
図:ニトリ×Google共同マーケティングスキーム
(1,128バリエーション各々に応じて最適な商品を選定)
図:広告配信されたクリエイティブ
(左上の商品クリエイティブが自動最適化)
ユーザー一人ひとりに合わせた広告配信の実現には、各種プラットフォーム/ツール横断での総合的なアプローチが欠かせません。今回のトライアル配信では、データ連携→分析→広告作成・配信までを Google のソリューションに統一する事で導入も円滑に進みました。
配信の成果
前回実施した同様の Google 検索マーケティング チームとニトリの施策と比較した際に、ディスプレイ広告のクリック率は大きく上昇し、2 倍以上となる +110% になりました。ユーザーそれぞれの状況に応じた商品を提示できたことが高い成果につながったと考えられます。
図:ディスプレイ広告バナークリック率( CTR )
今後の展望
同社 WEB 広告宣伝グループ担当者は「今回は Google との共同プロモーションという形で実験的に実施させていただき、機械学習を用いた Google プラットフォームの横断活用のメリットを実感しました。人力では実施することが難しいけど、大きな課題であるユーザー一人ひとりに最適化されたマーケティングが一元的に実施できるのはとても魅力的でした。今後のマーケティング活動を飛躍的に改善できる可能性を秘めていると感じました。」と語っています。